当て馬ならし
勢いよく不意をつかれたので
さっきまで座ってた場所に
またストンと座ってしまう。

そして、頭の上の柱に
どんと音をたて大きな両手があてられる

驚いて見上げると

右手で眼鏡を直す。

その奥の細められた
夜色の瞳が私を映している。

ただでさえ長身の彼を
椅子に座って見上げる。
覆いかぶさるように
私の進路をふさいだ彼が言った

「そうやって誘惑してるわけ?」
ワザとらしく目線を動かす
はっと気が付いて自分の体を見ると・・・

濡れたドレスは
肌にまとわりつくだけでなく
薄い生地に
下着のレースがわかるほど
くっきり透けている。

さらに体のラインに
ぺったりとくっついて
ある意味
裸より恥ずかしい状態になっていた・・・

顔に血が一気に登ってくる
さっきまで寒いって思っていたのに、
頬が熱い・・・
心臓がどきどきと
波打ち始める。

そしてなにより、
そんな恰好をこの陰湿な眼鏡野郎に
見られたうえで
またそれをネタに
イヤミを言われた。
・・・・くやしい・・・・

彼になにか悪いことしたのか私は?
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