当て馬ならし
その時・・・
ふわりと暖かい布に包まれる
優しい肌触り・・・

はっとして目を開くと
真夜中色のローブに包まれていた。

その光沢は暖かく
淵に施された魔術的な文様が
青く淡く光っている。

誰のものかわかって顔を上げる

でも、そこにはもう誰の人影もない

室内をみると階段を
上っていく白いシャツの背中が
見えた・・・

雨の中を追いかけたにしては
一切濡れていないそのローブ

魔術の中には
瞬時に空間を移動する呪文が
存在するらしい。

ただそれを使えるのは
相当な技術の持ち主

そう、天才と謳われる彼なら
可能なのだと・・・

助かった・・・
助けられた。

彼にとっては憐みだろう。
それがなんであろうと
雨に濡れてしまったのは
彼のせいではないのだから
感謝しなければいけない。

複雑な思いに・・・
唇を噛んだ・・・
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