当て馬ならし
私はあわてて木刀を収めて謝る
「ごめん、この勝負
 また後日でいいかな?」
さっきまでの彼の瞳の光は、
私のあわてた様子を映して消えていった。
そして、綺麗な氷の剣は
シュパーンといって霧消する

彼はまたふわっと欠伸をして
緊張も何もない顔にもどって
急げとあっちいけと言う感じで
手を振って促す
「ども」
と駆け出そうとして振り返り
「今日はありがとう」
と言った。
彼は、目を一瞬細めてそれから
口角を少し上げて笑った気がした。

あとは全速力で部屋に戻って
朝食の準備に取り掛かる。
< 212 / 437 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop