当て馬ならし
疲れた・・・
心を覗きっぱなしにしていたせいだ。
いや、寝不足のせいなのか・・・
・・・ひどく疲れた・・・
でも、そんな事おくびにも出さず、
笑顔でアル王子に感謝を伝える。

労いの言葉を残して去っていく
アル王子の背中を
心と一緒に見つめる
迷うことなく揺らぐこともない背中
・・・そして心・・・

っと、王子の向かった扉が開いた
・・・その瞬間

―ゾワリ

背筋を這う暴力的な寒気が
私の思考を奪った
この国に対する破壊衝動
・・・憤慨・怨念・・・
真っ黒に渦巻く悪意の塊

開いている能力が受け取った情報に、
対応できず
身体が傾ぐのがわかる

頭痛がして息が浅くなる・・・

王子の心を覗くために
開いていた能力が
今、別人の心を受け取っているのだ
となんとか思い至る

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