当て馬ならし
充分に時間を置き物陰から出て、
きた道を目立たないようにひきかえし
魔術師塔の前まで来た時だった。

周囲に溶けるようなローブが
私の進路をふさぐ

見上げるとそこに、
猜疑の冷たい眼差しが
眼鏡のレンズ越しに降ってきた。

「こそこそと、何をしていた?」

いつもよりさらに低く響く声
夜をまとったこの国の第二王子
・・・ラル王子・・・

その一言で、
ここでの私の行動が
見られていたことが解った。

もしかして・・・
私を追ってきていたのだろうか?

だったらあの呟きを
きていないのだろうか!

はやる気持ちが駆け引きをする
冷静さを失わせる

「ジフェルの呟き、聞こえた?!」

その発言は彼の表情を
より険しいものにした。

「貴方にうちの宮廷魔術師を
 呼び捨てにされる覚えはない」
< 251 / 437 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop