当て馬ならし
王子との対面でもなく
姫同志の懇親会のようなものなので、
そこまで気合も入るわけでもなく、
無難にまとめた
黒いIラインのロングドレスを着て
馬車に乗る。

一度集合時間に集まって、
忘れ物をしたからと言って
他の姫達は先に劇場に行ってもらう。

ポーチを取ってきてもらって
一人だけで遅れて馬車に乗り込む。

これで、私は専用の馬車が
あてがわれることになる。

充分余裕をもって劇場に入る。

劇の途中の休憩で、
頭痛がすることを訴えて
姫達には謝って中座する。

もともと、特に親しい間柄でもないので
表面上心配されてただけで済む。

ただ、ツインテールちゃんだけ
なぜががっかりしたような顔をして
それから、きつい口調で
「さっさと帰っておやすみなさい、
 ここで倒れられても困るのよ!」

と“心配”してくれた。
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