当て馬ならし
突然、ラル王子が私の方へ飛びかかる
訳が分からなくて
声を上げそうになるのを
手のひらで口を押えられて止められる。

そのまま、転がるように
抱え込まれ木の影へ

背中から包まれるように
抱きかかえられて座り込む

耳元で詠唱が聞こえると・・・
自分から見えている手や足が消え始める
「黙れ」
声は潜めているが、
鋭く命令されてうなずくと
口に合った手の感覚が消えた

そのまま彼の両腕は
私を抱きしめるように包み込む

首筋に彼の息がかかる・・・

何・・・なんなの?
対立してたのにどうしてこんな状況に
なってしまったのか・・・

騒ぐ心臓の脈動が私を包むその腕に
伝わってしまうんじゃないかと
すこし身じろぎすると
「動くな」
そう言って強く抱きしめられて
・・・カッっと全身が熱くなった。
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