当て馬ならし
ふっと・・・私を抱えていた腕が緩んで
透明だった体が実態を表す

それを合図に私も
無意識で止めていた息を吐いた。
すると首筋に暖かいく
柔らかいものが触れる・・・
そして肩にことんと重みが乗った。
肩に乗ったのは彼の頭
・・・首筋にあるのは・・・唇・・・

その唇から吐息と一緒に吐き出された言葉

「わるかった・・・」

疑ったことだろうか
・・・突然拘束したことだろうか・・・
首筋にかかる熱い吐息・・・
体の芯がゾクゾクする

そんな場合じゃないのに
顔が赤くなっていくのが解る

どうして、彼はいつも
突然背後から現れる
なんの準備もできなくて
いつも私はこうやって動揺させられて・・・
もっと上手くあしらいながら
立ち回るのは得意だったのに
なんで、この人には
それが出来ないんだろう・・・

緩められた腕を
・・・つい抱きしめてしまう・・・

うっ!違うのに・・・
なんでこうやって彼に
甘えてしまいそうになるの
とにかく彼に解ってもらうなら今なのだ。
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