当て馬ならし
身体の奥に生まれた感覚を
今はとにかく無視して立ち上がる

「森の中に何かあるわ。
 詳しくは後で話すから
 とにかく奥へ行ってみましょう」
なかば強引に彼を立たせる
彼もすぐにいつもの冷静な瞳になった。

ラル王子が先だって獣道に入っていく。
ただただ、無言で道をたどる。
暗い道を彼は苦も無く進んでいくので、
私は必死に彼の背を
見失わないように歩いた。

しばらくすると、木々が少し減って
月明かりが辺りに落ち始める
と目の前に突然、
空き地が広がった。
シンと静まりかえった空間に
月明かりだけが落ちている。
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