当て馬ならし
「私が、この時間に
 あそこにいてはいけないでんすよ?
 見られたからには
 ・・・ふふふ・・・
 命はとりませんから
 あ~あ~ん、しん、してくださいね。」
ゆっくりと顔を近づけてくるジフェル
歯を食いしばって肩の痛みに耐えながら
距離を取るため後ずさる
「でも、ずっとは・・
 ここに閉じ込めておけないはずよ
 ・・夕食までに部屋にいなければ
 メイドが騒ぎ出すわよ・・・」
必死にもがいて言葉をつぐ私を
ハハッ!と笑って
ジフェルは体を大きく反らす。

蝋燭を持っている反対の右手が
ローブの内側を探る。

背筋を伸ばした彼のその手には
ナイフが握られていた。
虚ろな瞳がこちらを見ている
・・・ナイフが顔の前で光る・・・
ジフェルはナイフの刃を私の首筋にあてて
「魔術は偉大だよ・・・お姫さん。」
そう言ってナイフを振りかぶった、

刺される!

と思い痛みに耐える為
息を止めてナイフの行先を見る。
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