当て馬ならし
覚悟は決めて個室の扉をたたく
「ちょっと、あんた!」
内側で泣いていた声は
ヒッと言って声を潜めた

「泣いてるの?
 用を足すんじゃなきゃ
 迷惑だからでてきなさいよ」

まー他にも個室は沢山あるから
ここが埋まってるからって
本当は誰も迷惑しないけどね。

でも、泣いてた気配はあわてて
中でバタバタしはじめて
ガンとどこかにぶつけた音を立てながら
転がるように個室から出てきて

「す・・すびまぜんでしちゃっ・うう・・・」
とカミながらあわてて出て行こうとする
その腕をぐっと握ってひきとめる
細く白い腕だった
深い緑色のローブのフードを
被って出てきたので顔が
分からなかったのだが
腕を弾いた瞬間フードが取れて
濃いブラウンの柔らかい髪が
はらりとこぼれる。
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