当て馬ならし
「あ、すみません。
 ここは部外者でも
 利用して大丈夫でしょうか?」

こんな時間に書庫にいるという事は
この書庫を管理してる
司書なのだろうか?
机の上に本を置いて
彼はこちらを見た。
眼鏡越しに見える
切れ長の瞳は知的だ・・・
品よくカットされている髪は
夜に溶けるような黒だけど、
光の当たりようで青く透ける
ラフに着ている白いシャツに
黒いパンツ。
シンプルだけど質が良いのが分かる。
白い肌も、まるでこのまま
消えてしまうんじゃないか
と思えるほど透明感があって
うらやましくなる。

形良い唇が少し開いて、
面倒くさそうに
「ああ・・・」
それだけ言った。
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