[ショート] -The moon of night-
ここは都会だから、あまり星は見えない。
だけど、まだ完全な丸になりきれていない、不完全な月が、こっちをじっと見つめているようだった。
風が吹く。
空色のカーテンが、ふわりと宙を舞う。
月は、綿菓子みたいな白い雲にかき消されて、見えなくなった。
「・・・姉貴??」
「・・・ん??」
テレビにいつの間にか見入っていた姉貴は、こちらを見た。
綺麗な真っ黒な目に、魅了される。