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その場から父親がいなくなった後、ハルが別の所へ走って行ったから、僕はその後をこっそり追った。

ハルはマンションの自転車置き場の陰に隠れてしまった。

行こうかどうしようか迷っていると、陰から絞り出すように声を押し殺して泣いている声が聞こえてきた。

僕は強い衝撃で胸を絞られるような痛みを感じた。

あんな胸の痛みを感じたのは、あの時が初めてだったかもしれない。

苦しくて、息をするのも苦しくて、僕は自分の心が壊れるんじゃないかと思った。

ハルは当事者なわけだから、もっと苦しい思いをしているはずなのに。

それなのに、僕はその後すごく泣いてしまい、あんまり泣くから、うちの母は僕が誰かに苛められたんじゃないかと心配したけれど、理由なんて言えなかった。
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