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今日は仕事が早く終わって、同窓会まで時間があるから、重くて邪魔だった資料を置きたくて家に戻ったら、玄関に女の靴があった。
前とは違う雰囲気の靴。
一瞬家に入ることを躊躇したけど、「でも、ここ私の家だもん」と思い直し、何があっても驚かないように心を消し去って、わざと大きな足音を立てて家に押し入った。
浩介の腕の中にいたのは、この前とは違う女。
予想通りの状況だったし、心の準備をしておいたから、冷静さを保つことはできた。
「……早く自分の家を見つけてくれないかな」
やっぱり強く言えず、小さな声しか出ない。
今度の女は恥じらいがあったらしく、びっくりした様子で黙って浩介を見ていた。
「今月中にこの家、解約するって言ったよね。荷物置きっぱなしなら、捨てちゃうよ」
解約の連絡は既に不動産屋さんにしてあった。
でも、私もまだ次の部屋を見つけていない。
早く見つけないと。
私は仕事の資料を置いて、チラッと浩介見た。
目が合うと、浩介は目を細めて無言でパタパタと手を振った。