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ハルの父親のことを知ってから、僕はハルのそばにいる時、傷が付いていないか痣がないか、いつも観察していた。

うちの母から「恥ずかしいから、そんなジロジロ見ないで」と言われたけれど無視した。

僕は子どもの頃から、そういう形振り構わないところがあったのかもしれない。

今考えれば、見えないところに傷があったのかもしれないけれど、あの頃のハルには表から見える傷はなかった。

でも、体の傷だけが傷ではない。

ハルが心に負った傷は相当深いものだったのだろうと思う。

心の傷はきっと癒えることなく、ずっと彼女と共にあって痛みを与え続けたに違いない。

どんなに辛かっただろう。
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