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そもそも僕は、最初からハルをうちに連れて帰るつもりだったし、連れて帰ったら逃すつもりもなかった。

ハルの実家は知っていたけれど、実家に送るつもりなんてさらさらなかった。

実家に送ってくれれば良かったのに、とか言われたら、思いつかなかったことにしようと最初から決めていた。

帰りにタクシーに乗せる時も、目撃される可能性は織り込み済みだった。

つまり、僕はハルに嘘をついた。

それも、かなりたくさんの嘘をついた。

それなのにハルは純粋な瞳で、僕の言葉をすべて信じていた。

あまりにハルが純粋すぎて、僕は自分が真っ黒くてベタベタした汚いモノに思えた。
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