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家に着いて、電気もつけないままハルをベッドにそっと置いた。

それから、髪に触れてゆっくりと梳いた。

ハルの髪はしっとり柔らかく手触りが良くて、これも絶対に忘れられない感触だった。

そして、他の男もこの髪に触ったのかという思いがよぎって、身の内を獣が暴れるような錯覚に襲われた。

もう、僕の心は完全に壊れてしまって、ネジがどこかに行ってしまったんだと思う。

ハルのこと以外、もう何も考えられなかった。

絶対に自分の方へ振り向かせてみせるから。

だから、今だけは許して。

額をコツンとぶつけて、そんな都合のいい自分勝手な言い訳をしてから、僕はハルにキスをした。

その感触を刻み込むように、何度も何度もキスをした。
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