ページをめくって
「おばちゃん……、お母さん、元気?」

「うん、元気だよ」

「そっか」

「ハル?」

「ん?」

「何かあった?……辛そうな顔してる?」

「えっ?」

和馬は心配そうなまなざしを向けてきた。

その瞳に、喉の奥をグッと押されたような気がした。

表に出ないように、自分でも思い出さないように振舞っていたはずなのに。

心地よい喧騒とお酒の力で現実を忘れかけていた私の心は、一気にドン底に引き戻された。


「そんなこと、ないよ」

急いで取り繕うように笑って見せたけど、和馬はじっと私を見つめたまま、そのまなざしを外してくれない。

優しげな茶色い瞳と目が合うと、吸い込まれるように視線を外せなくなる。

なにコレ?

どうしたんだろう。

そんなに見るの、やめてほしい。

私はつい表情を曇らせてしまった。
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