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 (2)声に出してよ

9時を過ぎてしまって、急いで下に降りた。

「ごめんね、遅れちゃって。それに、いつも迎えに来てもらって……」

「いつまで同じこと言うつもりなの?」

「だって」

「困ったね、僕の姫は」

またそういうこと言うの、やめてほしい。

そしてやっぱり、私の手を取った。

いけないと思っているのに、私も手を繋いでいたくて、誘惑に負けて握り返してしまう。

和馬は微笑んで、そのまま歩きだした。
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