ページをめくって
胸に手を当てて、大きく息をして落ち着こうとしたけど、うまくいかない。

私は声を抑えようと、両手で顔を覆って必死に声を押し殺した。

次の瞬間、目の前のローテーブルが動いた音がして、いきなり抱き締められた。

「だめだよ。そんな風に泣かないで。声に出して泣いてよ」

驚いて動こうとしたけど、すごい力で閉じ込められていて、全然身動きがとれなかった。

和馬は強く抱き締めたまま、あやすように私の体を揺すった。

「いっぱい泣いていいから。いくらでも甘えていいんだから」

和馬の声が耳元で聞こえた。

その声は優し過ぎて、胸がいっぱいになって、また涙が溢れてきた。

そんな風に抱き締められたら、もう取り返しがつかない。

そんなこと言われたら、胸がえぐられたみたいに痛くなる。

涙が全然止まらない。
< 216 / 522 >

この作品をシェア

pagetop