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 (3)設定じゃなくて

和馬はなかなか離してくれなかった。

「もう大丈夫」

「まだダメ」

「こんなことされたら勘違いしちゃうよ?」

「勘違いじゃないよ」

本当にそういうこと、言わないでほしいのに。

「落ち着いた?」

そう言って和馬はやっと、私を腕の中から解放してくれた。

腕が離れていったら、温かい体温も離れていって、急に体が冷えて寂しくなった。

本当はもう少しだけ、腕の中にいたかった。

でも、そんなのもっと辛くなるだけだ。

「落ち着いたよ」

「じゃあ今度は僕の話しを聞いて」

え?何?

なんだろう。

私は不安になって和馬を見上げた。
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