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「私、不動産屋さんに行かなきゃ」

「不動産屋?」

「今借りてる家、今月いっぱいで解約だから、探さなきゃ」

和馬は私を離すと、両手で肩を掴んだ。

「ここに来ればいいじゃない」

「そんなこと……」

「もう、今さら離れられないよ」

胸がキュンと痛んだ。

そんな真剣な目で見つめられたら、何も言えなくなる。

私はうつむいた。
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