ページをめくって
もう、本を読んでいても気になってしまって、心臓が気持ち悪くドキドキして、現実逃避すらできなかった。

何度も溜息をついて外を眺めていたら、和馬は約束通り、お昼過ぎに帰ってきた。

「ただいま」

「おかえりなさい」

和馬は私をじっと見た。

もう、気が付いてる。

「どうしたの?何かあった?」

「……浩介から電話があった」

「で?」

「出なかった」

「そっか」

和馬は少しほっとしたような顔をして笑った。

その顔を見て、電話に出なくて本当に良かったと思った。
< 264 / 522 >

この作品をシェア

pagetop