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「ちょっといい?」

突然、和馬が浩介に近づいた。

あまりにスッと近付いたから驚く暇もなくて、私は茫然とその様子を見ていた。

あっという間に和馬は浩介を奥の部屋へ、いいからいいからと押しやった。

何か二人で喋っている。

そんなに近付いて大丈夫なの?

和馬は余裕の表情だけど、獲物を捕らえたみたいな鋭い眼をしている。

何?

どうなってるの?

二人で話すことなんて、何もないはずなのに。

「意味、わかるよね?」

そんなような和馬の言葉が聞こえた。

和馬はニヤッとすごく意地悪な笑顔をした。

何か言ったんだ。

悪いことを言った時の顔をしてる。

浩介の顔は、よく見えない。

本当に大丈夫なの?
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