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和馬は意地悪な表情を残したまま戻ってきた。

浩介は黙って腕を組んで、柱にもたれかかったままこちらを見ている。

私は本当にわけがわからなくて、不安な表情を和馬に向けた。

「何を話したの?」

「大丈夫だよ」

和馬はフッと笑っただけで、内容は教えてくれない。

浩介はこちらをじっと睨むように見ていたけれど、急に態度を変えた。

「アンタ、この女に騙されてんだよ。そもそも俺ら、別れてないし。二股かけられてんだよ。気の毒だけどさ」

「え?ち、ちがっ……」

何を言っているの?

どうして浩介がそんなことを言い出したのか、全然理解できない。

予想もしなかった言葉で頭が真っ白になって、ろれつが回らなくなる。

私は「違う」と言いたくて、和馬を見上げた。

和馬はわかっているよと言うように、私の頭に手を置いて言った。

「別にそういうおしゃべりをしに来たわけじゃないから」
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