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浩介は唐突にドンっと思いっきり壁を叩いた。

ビクッと肩が震えた。

恐怖で頭が痺れる。

「遥が一緒にいてほしいって言うから、いてやってんだよ!」

「もうハルには近付けないって言っただろ」

和馬、いったい何を言ったの?

浩介はしばらく黙っていた。

「わかったよ」

吐き捨てるようにそう言って、奥の部屋へ消えた。

あれ?

出て行ってくれるのかな。

私は観察するようにじっと見ていた。

……私、結局ほとんど喋っていない。

いつの間にか和馬が何かを進めていて。

一人で来ても、きっと何もできなかった……。

私、ホント、ダメだ。

浩介がチラッとこちらに顔を出して言った。

「遥、ちょっとこっちにおいで」

急に言われて、私はビクッとしたものの、何も考えないまま足を踏み出そうとした。

「ダメ」

その瞬間、急に後ろから和馬の腕が伸びてきて気が付くと後ろから抱きとめられていた。

「行っちゃダメだよ。行ったらあいつはロクなことをしない」

腕の中にすっぽりと包まれている感触と、耳元で言われたことの意味がよくわからなくて、私は頭が真っ白になった。
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