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でも、浩介は怒り狂った目をしつつも、手は出してこなかった。

「いい気になんなよ!お前なんか、なんの価値もねえんだよ!」

「……」

うん、わかってる。

私には何の価値もないって。

だけど、正面からそう言われると、やっぱり胸の奥で痛み走った。

あれ?

でも、もっとずっと前から傷付いていたような気がする。

ああ、そうか。

私、気が付かないふりをしてたんだ。

傷付いていることを隠して、寂しい自分を見ないようにして、自分を騙し続けるために、あんなにおかしな状況でも強く言えなかったんだ。

心を消して、見えないようにして。

いや、でも、もっとずっと前から……。
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