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もっとずっと前から私、傷付いていた。

いつもお父さんに怒鳴られて。

怒鳴られないようにビクビクして、いつも「お父さんに怒鳴られない私」を演じ続けた。

本当の私なんて、存在してはいけなかった。

そっか。

きっと怒鳴られたことに傷付いたんじゃない。

私は、「私」でいられなかったことに傷付いていたんだ。


……大人になっても私、何も変わってない。

気が付いたら同じような男に捕まって、本当の私を出さないようにビクビクして、同じように傷付いてた。

今も「私」なんてどこにもいなかったんだ。


「私、浩介のこと、大っきらい」

急に言葉がついて出た。

その途端、涙が頬を伝ってぽろぽろとこぼれてきた。

あ、きっとこれ、今の私の本音なんだ。
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