ページをめくって
「涙、止まらないね」

「うん」

「止められるかな?」

「?」

目の前に影が落ちた瞬間、急に顔が近付いて唇が重なった。

軽く重なっただけの唇は柔らかい感触を残してすぐに離れた。

突然のことに息が止まって、目を開いたまま動けなかった。

あまりに一瞬で、幻だったみたい。

「まだ涙、止まらないね」

「……う、うん」

「じゃあ、やり直し」

「え?」

見上げたら、和馬の切なげな瞳と目があって、胸が詰まった。
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