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和馬はしばらく考えていた。

あんまり変なリクエストをされても困るな。

「その前に言っておくね」

和馬は立ち止まった。

「何?」

「ハルが料理を作ってくれてもくれなくても、どんなハルでも僕はハルが大好きだから」

そう言ってくれるような気はしてた。

「僕はハルが傍にいてくれるだけで、十分なんだよ」

そんな真剣な目で見つめられると、胸に刺さって喉が痛くなる。

せっかく止まった涙がまたこぼれてしまいそうで、下を向いた。

「泣いたらまた止めてあげる」

「道の真ん中だよ」

「気にしないよ」

「止めてもらわなくても大丈夫!」

私はなんとか自分を落ち着けて、深呼吸した。

「残念。最近の若者は!ってその辺のおばさん達から指をさされたかったのに」

私の困った顔を見て、和馬はニヤッと意地悪な笑顔をした。

もう、冗談なのか本気なのか、わからないよ。
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