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和馬の横顔は本当に怒っているように見えた。

そんな表情を見たら、なぜか胸の奥をギュッと掴まれたような痛みを覚えた。

「ううん、違う。そうじゃないの。むしろ嫌悪感、かな」

「じゃあ、一緒に行って追い出してやるよ」

「えっ?でも」

「『でも』じゃない」

「……でも」

「このままじゃダメ、でしょ」

「うん、そうなんだけど」

「じゃあ決まり。もう起きよう。コーヒーでも飲もうよ」

和馬は手を伸ばして掴まるように促した。

おずおずと手を伸ばし、そっとその手に触れると、グイッと掴まれて勢いよく引かれた。

勢いがよすぎて、一瞬目が回ったような感覚になる。

ベッドから降りて一息つくと、少し気持ちが落ち着いてきた。

見回すと、きれいに片付いていて、余計なものがない印象の部屋だった。

時計を見ると、もう10時を過ぎている。

ずいぶんゆっくりと眠ってしまったみたい。
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