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「僕はもちろんハルを大切にするけどさ、ハル自身も自分を大切にしないとね」

「うん?」

「働いて得たお金って、時間を割いて得た分身みたいなものじゃない?それを簡単に渡せてしまうなんて、自分を大切にしているとは思えないからさ」

「……そうかも、しれないね」

きっとお金だけじゃない。

そういう意味では、時間も空間も自分自身も、私は大切にしてこなかったのかもしれない。

そうやって全てを渡さないと、私から離れて行ってしまうような気がして。

和馬は本当に、何もかもお見通しみたいだね。

全然敵わないよ。

どこまで私のことを知っているんだろう。

本当は何もかも見えていて、何もかも知ってるんじゃないかって、時々怖くなる。
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