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「わっ」

部屋に戻ろうとした時、自分の部屋から出てきた和馬とぶつかりそうになった。

不意のことでふらついたところを、和馬が手首を掴んで支えてくれた。

びっくりして、少し目が回った感じがする。

「ごめん。大丈夫?」

「うん、大丈夫」

あ、眼鏡かけてない……。

見上げたら、見慣れない和馬がいて、吸い込まれるように目があった。

手首を掴む力を強く感じる。

なんか、距離が近くない……?

息遣いを感じて、唇の感触を思い出した。

すごくドキドキする。

ちょっとしか息が吸い込めない。

「何を考えてるの?」

「え?別に……」

「思い出したの?」

「……」

「僕は思い出したよ」
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