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帰って玄関に入ってからすぐに、思う存分抱き締めた。

でも、あんまり長く抱き締めていたら「冷蔵庫に入れるものがあるから」と言われて離す羽目になった。

いいよ、また夜に思う存分抱き締めるから。

ハルが簡単に作ると言っていた夕飯は麻婆豆腐だった。

本当に簡単に作れるの?と思っていたけれど、ハルはあっという間に作ってしまった。

しかも、麻婆豆腐の素を使わずに持っている調味料だけで作り出していた。

どうやったんだろう?

料理をしている様子を見たいのに、見ようとすると追い出されるからよくわからない。

「ね、すぐできたでしょ?」

「うん、すごいね」

僕が言うと、ハルはにっこり笑った。

そんな輝いた笑顔。

この一瞬を透明な箱に詰めて永遠に留めておきたいと思う。

でも、そう思っている間にも容赦なく時間は流れていってしまうけれど。
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