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「こんな時間だよ?疲れてるんじゃない?」

「少しは疲れてるけど、疲れてても作るの当たり前だもん」

それは、あんまり良い風向きとは言えない気がする。

「無理をするのはダメだよ」

「……今日はダメ?」

「ダメ」

頭ごなしに言い過ぎたかな。

ハルは不機嫌な顔をした。

いつもの可愛いふてくされ方とは違う。

珍しいな、そういうこともあるんだ。

その時はその程度にしか思わなかったけれど、だんだん僕は苦しくなってきた。

夕飯は僕が言った通り定食屋に行ったものの、いつもみたいに今日あったことを話してくれない。

「今日は、会社のことを話してくれないの?」

「特別なことなんてなかったもん」

「特別なことじゃなくてもいいんだよ」

「……話すようなことなかったから」

あ、これ、すごく嫌だな。

こうなると意地の張り合いみたいになっていくんだろうか。

でも、僕もここで譲るのは嫌だ。

「じゃあ、仕方がないね」

とりあえず、強がってみることにした。
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