ページをめくって

 (5)負けるのも悪くない

次の日の朝、ハルの目はよく見ると少し腫れているくらいだったけれど、僕は心配だった。

ハルはこのくらいすぐに治まるから平気、と言って元気に出かけて行った。

頼むから会社で寺嶋に会いませんように。

あいつなら絶対に気が付くだろう。

あいつが入り込む隙を作りたくない。

でも、迎えに行った時にさりげなく聞いたら、特に寺嶋と話した様子はなくて安心した。

そんなことよりハルには夢中なことがあって、僕達はさっそく話し合いをすることになった。

時間は昨日と同じ夜9時。

ハルは「やっぱりご飯を作っちゃダメ?」と聞いてきた。

「そんな無理してまで尽くしてくれなくても、僕はハルと一緒にいるよ」

僕は昨日よりもう少し丁寧に説明してみた。

「それはわかってる。だからね、和馬の為じゃなくて自分の為に作りたいの」

「自分の為に作りたいの?」

そんなに料理したいのか。

「だって……こんなに外食ばっかりしてたら、太っちゃうよ」

「あはは、すごく可愛いね」

本当に可愛い理由だった。

でも、からかわれたと思ったのか、ハルは口を膨らませた。

「ホントだよ?どうして和馬は太らないのか、不思議だよ」
< 411 / 522 >

この作品をシェア

pagetop