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 (6)僕らを離す者

今日は地方の支部で大盤解説の仕事があった。

将棋盤をすごく大きく拡大したボードに磁石で貼り付けた駒を並べて、進行状況を解説するというものだ。

本当の大盤解説は本会場で行われるものだけれど、僕がするのは地方の支部で行われるもっと庶民向けのものだ。

ワンコインでお菓子が付いてきて、みんな自由に対局していたり、次の一手を当てたりする。

そういう雰囲気も僕は好きだけれど。

僕は閉じこもっている割にけっこうおしゃべりだから、みんなの前で話すのも苦手じゃない。

参加している人もだけれど、事務局も含めて年齢層はかなり高い。

そもそも平日の日中にやっているわけだから、若者が来る時間じゃない。

終わったら飲みに行こうって絶対に言われる。

でも、今日は断ろう。

ここでは隔週で将棋教室も担当していて、かなりお世話になっているから本当に申し訳ないけれど。

僕は早く帰ってハルの顔が見たい。
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