ページをめくって
放心したまま歩き続けて、気が付いたら玄関の前にいた。

玄関の扉を開けると部屋の灯りが付いている。

ハル、急いで出て行って消し忘れた?

中に入ると人がいたから、僕はびっくりした。

「なんで、あなたがいるんですか?」

リビングに女が座っていた。

「あら、おかえりなさい」

吉崎怜奈(よしざきれいな)はにっこりと笑った。

怜奈は僕の師匠の娘だ。

さっき、玄関に靴あった?

全然気が付かなかった。

もう、注意力が散漫になっている。

どうやって家に入った?

ここにいるってことは、ハルを追い出したってことだろうか。

なんていうことを。

「居候の女がもういらないって、鍵くれたの」

「そんなわけないでしょう」

「本当よ。出て行く時にくれたの」

そんなわけがない。

ハルに何を言ったんだ?

ハルを傷付けたのか?

絶対に許さない。
< 424 / 522 >

この作品をシェア

pagetop