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やっぱり男と別れたんだな。

手っ取り早く僕の所に来たのか?

あんなに父親に大事にされて、好きなように甘えて、わがまま放題のくせに。

ハルは今どこにいるんだろう。

きっと一人で寂しい思いをしている。

僕が大事にしないといけないのに。

僕が大事にして、甘やかすって誓ったのに。

細い背中や輝いた笑顔を思い出して、胸が痛くなった。

早く探し出して抱き締めたい。

「彼女に何を言ったんですか?」

「私は別に何も」

「何か言わないと出て行かないでしょう?」

「座ってくれたら教えてあげる」

もうこうなったら、絶対に指示には従いたくない。

「じゃあいいですよ、教えてくれなくても」

「どうしても立っていたいなら別にいいけど。あの子、他の男の所に行くって言うんだから、ねえ?仕方ないじゃない。あんな子よりも私の方がよっぽどあなたを支えられるのよ?」

他の男って何だよ。

元彼?寺嶋?それとも、それ以外?

いやいや、そんなわけがない。

騙されちゃいけない。

この女は嘘をついている。
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