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「遥先輩、本当にそれでいいの?この男に散々泣かされてるみたいじゃないスか」

やっぱりこいつ、この間ハルの目が腫れていたことに気が付いていたか。

僕のせいで泣いたというのは、間違っていないから言い返せずにいると、ハルは首を振った。

「そんなんじゃないの」

「でも、昨日は追い出されたんでしょ?俺なら絶対に泣かせたりなんてしない」

「違う、本当に違うの」

「こんな甲斐性なしに尽すくらいなら俺に尽してよ」

それを聞いたハルは、僕に抱き付いていた手を離してスッと立ち、何かを決意したかのように深呼吸した。

「寺嶋君」

「はい?」

「先輩に対する口のきき方がなっていない」

「は?」

「いいかげんにして。私、寺嶋君と付き合うつもりなんてないから。もう仕事以外の話は聞きません」

さっきの電話に出た時と同じ声。

仕事モードのハルの声。

少し凛とした、こういう雰囲気のハルを見るのは初めてだった。

「なに急に堅いこと言ってるんスか」

「聞こえなかった?」
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