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寺嶋は急に目つきが変わった。

「いいんですか?そんなこと言って。社内にキスしたことばらしますよ?」

「別にキスくらいたいしたことじゃないもの。好きにすれば?」

ハルは強気のまま引かなかった。

頑張って流されないように、強く言えるように立ち向かっているんだね?

きっとハルも、自分が少しずつ変わってきていることを自覚していて、自分らしくいられるように努力しているんだろう。

でも器の小さい僕は、「キスくらいたいしたことじゃない」って言葉もすごく気になっているけれど。

寺嶋は植え込みの枠を蹴った。

「弱気な感じだから好みだったのに残念だね。いいですよ、俺そういう反抗的な女には興味ないスから」

寺嶋は吐き捨てるように言って、立ち去った。

ハルは茫然としていたけれど、しばらくして深く溜息をついた。

「ハル、大丈夫?」

「うん」

「帰ろう?帰って話をしよう?」

ハルは勢いよく首を振った。

「私、和馬の所にいちゃいけないんだよ」

「だからね、それは誤解だから」

「和馬は嘘をついているんだよ」

「僕のこと、信じられない?」

ハルはじっと押し黙っていた。

怜奈のやつ、どんな嘘をついたんだ?
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