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送る荷物をまとめたら段ボール3箱になった。

大きな旅行カバンがうちにあるとはいえ、一人暮らしの女の子にしては少なすぎる。

まあ物なんて、僕の家で増やせばいいさ。

宛名書の紙を書いて、集荷を待った。

「今度僕の両親に顔を見せに行かない?」

「うん、いいね。久しぶりにおばちゃんに会いたいな」

「そういう意味じゃないよ、わかってる?」

「あっ、……うん」

「イヤ?」

「そうじゃないよ。ご挨拶、だよね?……私もお母さんに言わなきゃいけないなと思って。和馬と一緒に住んでることとか」

「そうだね」

そういえば、ハルの父親のことばかりに目が行って、母親の存在をあまり考えていなかった。

父親が怒鳴っている間、ハルの母親は何をしていたんだろう。

母親は一緒になって怒鳴るような人じゃなかったと思うけれど。

でも、それをハルに聞くのは酷な気がした。

「明日、電話しようかな」

「今日はいないの?」

「いつも土曜日は夜勤なんだ」

「そっか」

そういえば、同窓会の日もそうだった。

あの日、僕が送らなかったハルの実家。

実家と言っても母親がいるだけの実家。

ハルにとって実家って、母親って、何なんだろう。
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