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「怜奈さん、私、和馬の傍を離れませんから」

「あなたね、和馬には迷惑だってあれほど言ったでしょう?」

「迷惑でも、私も和馬も一緒にいたいから離れません。あなたは和馬に言うことを聞かせたいみたいだけど、相手の言うことを聞いて一緒にいるなんて本当じゃないもの」

ハルがそんな風に僕らのことを言ってくれて、そんな風にはっきり言えるようになって、僕は本当に嬉しかった。

「泥棒猫のくせに、ほんっと生意気な子。育ちが悪いのね、どんな環境で育ったのかしら」

「いい加減にしてください!僕、嫌いなんですよ、あなたのこと。二度と来ないでください。顔も見たくない」

カチンときて強く言い過ぎてしまったかもしれない。

ハルも心配そうに僕を見ているのがわかった。

でもハルは、あんなに苦しい思いをしてきたのに、グレることもなくこんなに純粋な大人になったんだ。

それはハル自身の努力だってあるはずなのに。

それなのに、父親に甘え放題の怜奈がハルを侮辱することは許せなかった。

「嫌い、ですって……。そんな言い方!あなたなんてこっちから願い下げなのよ」

これは、かなりプライドを傷付けた感じだ。

高飛車な女がわざわざマンションの下で待っていたんだから、その時点で屈辱的だったんだろうけれど、その上、嫌いって言っちゃったからな。

でも本当のことだから。
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