ページをめくって
「あと、怜奈さんが来ても家に入れちゃダメだからね」

「わかってる」

「ハルは優しいから心配なんだよ」

「大丈夫!でも、……怜奈さんって和馬のことすごく好きなんじゃないかな。私に嘘をついたり、あんな風に待ってたりして」

「それは違うと思うよ。僕が身近な人間で一番大人しそうだったからだよ。どうやら別れたばっかりみたいだから、焦ってるんじゃない?」

「……そうかな。そうは思えないんだけどな。そういえば、ただじゃ済まさないとか言ってたけど、大丈夫なの?」

「大丈夫でしょ、あの人にできることなんて、たいしたことじゃないよ」

ハルは心配そうに僕を見上げた。

「和馬はいつも余裕だね」

「余裕?そんなことはないよ」

むしろ僕は、ハルの前で余裕なんてなかった。

観察し過ぎて視野が狭くなっていたし、ハルのロジックを恐れ過ぎていたし、今だって余計な心配ばかりしている。

「そうかな、いつも冷静で凄いなって思っちゃうよ」

確かに僕は冷静な方だと思うけれど、ハルの前では総崩れだった。

「そう見せているだけだよ。オロオロしてたらかっこ悪いでしょ」

「和馬のかっこ悪いところも見てみたいな」

もう散々見てるじゃない。

やっぱり君は鈍感だね。

「それはそのうちね」
< 476 / 522 >

この作品をシェア

pagetop