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第5章

 (1)宝物

戻って来れると思っていなかったのに、今こうして和馬と一緒に夕食を食べている。

おいしそうにご飯を食べてる和馬が目の前にいる。

本当に幸せ。

本当に良かった。

あんな話を信じるなんて、今考えると私って本当にバカなんだと思う。

でも、あの時は怜奈さんに責められて、すごく辛くてたくさん泣いて、でも離れなきゃいけないと思った。

覚悟を決めて離れたのに、離れた途端、一緒にいたい気持ちがあふれてきて、会いたい気持ちが止められなくて、もうおかしくなりそうだった。

だから迎えに来てくれた時は本当に嬉しくて、和馬が帰ろうって言うのを断るのは、胸が張り裂けそうで辛くてたまらなかった。

でも、断っても断っても和馬が切ない目をして一生懸命言ってくるから、結局流されてしまったけど。

あの時は本当に、遊ばれていても愛人でもいいから何とかならないかなんて考えてしまった。

でも、それだと気持ちの離れた男にすがりついていた今までの自分と何も変わらない。

私、やっぱりそんなに変わってないのかも。

だいたい、和馬がそんな不誠実なわけがないのに、あの人の勢いに気圧されて、和馬を信じなかった私がいけなかった。

違ったから良かったけど、あんな人が和馬の奥さんだなんて、すごく悔しい。

私のこと、何も知らないってバカにして。

怜奈さんもきっと、和馬のことをすごく好きなんだと思うけど、もう絶対に負けない。

私が和馬の世界のことを全然知らないのは、確かにそうだけど……。

今度、ちゃんと教えてもらおう。
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