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でも、それが私の正直な気持ちだった。

お父さんのことを好きだったことなんて、一度もなかった。

お父さんと私の距離は他人よりも遠かった。

そうやって距離を置いて傷付かないようにしていたんだと思う。

お父さんは医者だったけど、学歴がよくても、権威のある仕事をしていても、人格者とは限らない。

周りからはお医者さんなんてすごいわね、とかよく言われたけど、だからって性格が良いわけでも、素晴らしい父親でもなかった。

だから、体裁なんてむしろまやかしだって、私は子どもの頃から身に沁みていたけど、お母さんはあんなにお父さんのことで苦労したのに、どうして表向きの体裁ばかりを気にするんだろう。

会いたくないのに月に一度会ったりして。

あれもすごく嫌だった。

でも4年生になった頃、お父さんは再婚することになって、もう来なくなった。

後から知ったけど、お父さんはお母さんと離婚した時点でその再婚相手と付き合っていたらしい。

再婚相手には申し訳ないけど、あんな人を引き取ってくれて私はすごく感謝した。

どうか離婚しませんようにって心から祈った。

でも、お母さんはあんまり面白くなかったみたい。
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