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「でも、もう我慢しないことにしたの。言いたいことも言えないなんてつまらないし、もっと自分を大事にして、前向きに生きたい」

「そう」

「そのためには、お母さんにまず謝らなきゃいけないと思って……」

「そんな……、お母さんの方が悪かったのよ。お父さんのことも遥ちゃんにはたくさん嫌な思いをさせちゃったものね。……ごめんね、遥ちゃん」

「ううん、ごめんね、お母さん……。あんなこと言って。お母さん嫌な思いするかなって思ったんだけど、どうしても伝えなきゃいけないような気がして。ホントにごめんね……」

「いいのよ、そんなの」

「……本当に、ありがとね。お母さん」

私はすごく泣いてしまって、もしかしたらお母さんも受話器の向こうで泣いていたのかもしれない。

「……今度、和馬くん、うちに連れていらっしゃい」

「うん……、そうだね」

玄関がバタンと閉まる音がした。

和馬、帰って来たんだ。

「ただいまー、……ハル?」

和馬は扉の向こうで異変を感じているようだった。

「お母さん、新しい住所はメールで送るね」

「うん」

「今日はごめんね、こんな話になっちゃって」

「いいのよ、遥ちゃんが幸せならそれでいいんだから」

「うん、……ありがとう」

「じゃあ、お仕事無理しないで、体には気を付けてね」

「うん、お母さんもね」

「わかった。じゃあね」
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