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電話を切って、深く息を吐いた。

息も整わなくて、鼻もグズグズしていたから、部屋を出る気がしない。

「おかえり、和馬」

ベッドで膝を抱えたまま、扉の向こうの和馬に声をかけた。

「電話終わった?」

「うん、……でも入っちゃダメ」

また泣いちゃったから、あんまり見られたくなかった。

「ふーん。一人でエッチなことしてるんだったら、入らないよ」

「そっ、そんなわけないよ!」

「じゃあ入るよ」

「ズルイよ、変なこと言って」

和馬は部屋に入ると、私の横に腰をかけた。

私は涙を見られたくなくて、うつむいて急いで手の甲で涙を拭った。

「お母さんに話したの?」

「うん」

「反対されちゃった?」

「違うの、もちろん心配はしてたけど……」

「じゃあ、どうしたの?」

なんて言ったらいいのかわからなくて、ちょっと考えていたら、和馬が腕を広げた。

「おいで」

いつもその言葉には心を掴まれてしまう。

和馬の胸に飛び込むようにしがみ付くと、ぎゅうっと抱き締めてくれた。

この胸の中に閉じ込められていると、本当に安心する。
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