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4月上旬、年度初めで忙しく、残業で遅い時間に帰った私を待っていたのは、玄関にある女の靴だった。

私が触ったこともないようなピンヒールの靴。

とは言ってもね……、と半信半疑で部屋に入っていくと、本当に知らない女がいて驚いた。

下着姿の女。

蛍光灯の下でくすんだ女の肌色が、気持ち悪かった。

「あははっ、やだあ、コウちゃん。彼女帰って来ちゃったよー」

目の前の光景に、私は何も言えず、ただ茫然と立ち尽くしていた。
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